作詞
打ち合わせ風景をうたまっぷスタッフが潜入リポート!
────うたまっぷ作詞スクールコンテスト第1弾。
ここから新たな才能を世に送り出していくということで スタッフ一同特に気合が入っていると話す、
シャインファクトリーの増沢正康社長(※)。 まずはこの詞を書かれた薫さんに、その経緯を聞いていきます。

※ゆうりさんの所属事務所シャインアーツ(※)の代表取締役。
※シャインアーツとは、シギさん(エピックレコードジャパン)、ゆうりさん(ZAIN RECORS)などのアーティストの他、 俳優・女優を育成している音楽芸能プロダクションです。

3人が顔を合わせるのは今回が初めて。
それぞれ曲に対して抱いていた想い、詞に対して抱いていた想い、薫さんの 詞が選ばれた理由などを交えて、同じ作品を作り上げるプロの真剣かつ 和やかな話し合いとなりました。

シャインファクトリー増沢正康社長

シャインファクトリー増沢正康社長: この詞を拝見させていただいて、これは僕の主観的な 意見なんですけれども、ご両親とか、親に対しての思い入れが非常にある詞 だなと勝手に思ってまして。でもぱっと見だと例えば好きなまま別れてしまった とか、そういう『恋人』に対してのつらい思い出を思わせるような部分もあるなと 思うんです。
一応ビジネスベースで考えていくと、特定の誰か・・・例えばお母さんに 対してとかおじいちゃんに対してなんだなっていう曲よりは、もう少し間口を 広げて、聞き手側が自由に想像できるってこと必要になってきます。
ゆうりとも話をしたのですが、そのあたりを踏まえてたとえば「背負われ て泣きながら」の部分を直したらどうかな…とか。そこらへんのご相談も含めて 薫さんのお話を伺いたいと思ってまして。
まずこの作詞のテーマはどんな感じで決められたんですか。

薫さん: うちの両親は健在で元気にしているんですけれど、 祖父が亡くなった時にもう少し優しい言葉をかけておけばよかったなあって いう思い出がかつてあったことをこの曲を聴いたときにふと思い出しまして。
私の場合は、祖父が亡くなる前に、会いに行ける機会があったんですね。
祖父はちょっと遠方に住んでいて。寝たきりになってるのも知ってたので 会いに行こうかなって思ってて、でもそのひと月ふた月先に別の用事で 行く用事があったんで、じゃあその時でいいよねって言ったがためにその間に おじいちゃんが亡くなって。そのときにものすごく祖母に責められたんです。 「あなたが会いにくるって言ってたから、おじいちゃんすごく楽しみに してたのに」って言って。それをずっと引きずってたつもりはないんですけど、 変なものでこの音楽を、メロディーを聴いたときに、なんていうか 口数少ないんですけどすごくあったかく向かい合ってくれたおじいちゃんの ことをふっと思い出してしまって。テーマがもうそこに定まってしまったんです。 なので少し間口を広げて書かないとなとは思ってたんですけど、どうしてももう テーマがそこに定まってしまって。

シャインファクトリー増沢正康社長: それはある意味引き寄せられたというかメロディーから発想するものが もうこのイメージになってしまったと。

薫さん: それこそ10年以上前の話なので、普段日常では思い出すこともなかったん ですけど、メロディーを聴いたときにおじいちゃんちに遊びに行って、夕方帰る ときの空の暮れた感じとか迎えにきてくれたおじいちゃんとか、そういうものが ふわーっと情景で浮かんできて。

シャインファクトリー増沢正康社長: でもこれ、そのとおりですよね。発想とすると牧歌的な…

坂本竜太さん: そう、基本的にものすごくシンプルなメロディーで、 ただ流れていくんだけど、積み重なっていくうちに深くなるような。現在の J-POPには奇をてらってどんどん展開していく曲が多いんですけど、なるべく そういうのを少なめに作ってみました。
でもなんかやっぱりすごいストレートな言葉が(詞に)出てるんで。

薫さん: あえてこの曲は奇をてらって書いたらいけないなっていう気になったんですよね。

薫さん

シャインファクトリー増沢正康社長: 時間軸でいくとまさに夕暮れとか、手を繋いで歩くとか、そういうイメージは たしかにこの詞が出来上がる前から僕らもすごく強く抱いていたんです。
ちょっとレトロな感じというか、子供が風船を持っていたりするような、 そういう光景ですかね。

薫さん: まさにそういう感じですよね。そういう光景がふわーっと浮かんできて。
ただその、祖父が亡くなったりしたことっていうのは淋しいんだけれども、 思っててくれたりしたことは変わらないっていう。自分のなかに残ってるし、 だからわがまま言ったりしたこともあったけどごめんね、『ありがとう』っていう。
マイナスの言葉はタイトルにはしたくなかったんですよ。

――――メロディーの持つあたたかさに導かれるようにして出てきた、薫さんの歌詞。
ここでさらに驚くべきことがゆうりさんから語られます。

シャインファクトリー増沢正康社長:ゆうりはこれ(歌詞)見てどう思った?

ゆうりさん:いいなと思ったよ。実は私のおばあちゃんも去年亡くなって、 それでまったく同じようなことを体験したんです。私も田舎が遠くなので、なかなか会いにいけなくて…

薫さん:福井ですよね。

ゆうりさん

ゆうりさん:そうですそうです!正月には会ったんですけどそのあとすぐに亡くなって しまって。まさか2月に亡くなるとは思ってなくて、自分もプライベートで結婚したりとかいろいろあったんですけど、 結局その報告をしただけで来てもらったりできなくて。 伝えたかったことをあんまりおばあちゃんに言えてなかったんです。 そういうのもあって、この詞を見たときにおばあちゃんのこと思い出しちゃうなっていうのがあって。

薫さん:曲を聴いたあとにゆうりさんのプロフィールを拝見させていただいて、 出身地が福井ってあったので、福井の方ってわりと核家族よりも、おじいちゃんおばあちゃんと 一緒に住んでいることが多いっていうのを友人から聞いたのを思い出したんです。 やっぱり大阪とか東京とかよりも、家の中に子どもがいてお父さんお母さんがいて、 おじいちゃんおばあちゃんもいるっていうのが自然にあるんで、その結びつきっていうのは ゆうりさんにも共感してもらえると思って、これは書いてもいいのかなって思えて。 メロディー聴いてプロフィールみて、これしかないって思って(笑) たしかにこういうテーマでコンテストに出すって言うのはどうなのかなっていう迷いはあったんですけど、 テーマとしては絶対間違ってない、あとは自分でこれをどう表現しようかって思って。

ゆうりさん:これってけっこう誰にでも当てはまることだよね。

薫さん:誰も見送らない人生っていうのはないと思いますし。

シャインファクトリー増沢正康社長:いろんな作品を応募していただいて、 かなり幅広いテーマが送られてきたんですが、いまの歌手(ゆうりさん)の環境、おばあちゃんのことも含めて、 やっぱりこの曲が求めてたものっていうのは、これしかなかったんじゃないかと思います。 たしかに技巧的にすごくうまいものとか、とにかくたくさん送られてきたのでほかにもいいものはあったんですが、 読んで、本人の歌がハマって、説得力が2倍3倍になるっていうのはこの詞だと思うんです。

打ち合わせ風景
――――三者三様であると思っていた想いが、ここまで見事に同じものを 見つめているということはまさに奇跡としかいいようがありません。 坂本さんのメロディー、薫さんの歌詞、そしてゆうりさんの歌。
そのどれを取り去ってもこの曲は成り立たない。誰しもがそう確信した瞬間でした。
この後曲のカラオケテープを聴きながら、さらに詳しく詞のもつ世界をひもといてゆきます。

坂本竜太さん:(曲と歌詞が)もうばっちりあってますね。

薫さん:出だしの一行目とか、1回目聞いてるあいだにもうこの2コーラス目のところに さしかかるころには言葉が一緒にきこえちゃったんですよ。それを外したバージョン とかも考えようとしたんですけど、もうはまりすぎてしまって。 これはもう完全にメロディーに引っ張ってもらって出てきた歌詞ですね。

シャインファクトリー増沢正康社長:いろいろ話してて思ったんですが、結婚式とかでいいよねってちょっと思ったんだけど、 「さよなら」って入っちゃってるんですよね(笑)

全員:あー・・・(一同残念な笑い)

坂本竜太さん

坂本竜太さん:でもひとつのくぎりっていう意味ではさよならでもいいんだけど、 最後に言わせてっていうのがまたよくてね。 これに歌が入るのがすごく楽しみですね。変える必要は・・・ないかな。 そういえばさっき出てた「背負われて・・・」の部分どうしますか? さきほどの薫さんの話を聞いてしまったからこれしかないと思っちゃいますけど、 おじいちゃんに限定しなくてもいけるとは思うんです。 夕暮れどきの、景色のほうをもう少し見せていったらどうかなと思ったんですけど。 冬なのかなとか。

薫さん:これは書いたほうの勝手なイメージなんですけど、子どもの目線と、背負われた ときの目線って違いますよね。誰かに背負われたときの目線っていうのはその人の目線に近くなりますよね。

坂本竜太さん:なるほど、それが「景色」になってるわけですね。 後ろに「懐かしい」とか「遠い」とかって単語も出てるんで、このノスタルジックなままのほうがいいかもしれないですね。

――――打ち合わせの前に、詞を手直ししていただくかもしれませんと お伝えしていたので、どのくらい変わるのかと思っていたという薫さん。 増沢社長がこのあと「すべてが握手をしすぎている」と言ったように、 ほぼこのままの歌詞でOKとなりました。 きっとこのメロディーはこの歌詞を待っていたのに違いない。
そんなふうに思えるほど、ぴたりとハマったこの曲がどんなふうに出来上がるのか、 歌入れの結果を楽しみにしていただきたいと思います!
 
作詞