伊藤 薫教授 インタビュー

1■作詞家の仕事を始めたきっかけ 2■譜面と作詞の関係について
動画01・十代の頃から、音楽の仕事に憧れて
・作詞は24時間オープン、どこでも書ける
・作詞、作曲を同時に行う時は…
動画02・譜面と作詞の関係について
・作詞をする時の環境は…

動画03・本やDVDのタイトルに刺激を受ける
3■作詞をする際に気をつけること 4■仕事のやりがい
動画04・経験したものをポリシーに
・「歌書き」という仕事
・作曲家と力を合わせての共同作業

動画05・思い出深い作品とエピソード
・「恋する感覚」を失わずに…
動画06・作詞家の仕事を通じてのやりがい
・「作詞家の目」でものを見る

動画07・オフの過ごし方
動画08・教授から皆さんへのメッセージ



ほとんど迷いもなく、音楽の仕事に就こうと思ってた
───それではまず、最初の質問なんですけれども
伊藤先生が、作詞家の仕事を始められたきっかけを教えて頂けますでしょうか。
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photo伊藤教授(以下「I」): えーと、僕は曲も書いてたもんですから…、
自分でデビューをしようと思って。
んで、自分の歌を、自分で書くような、ところから始まりまして。
──だから、作詞だけ始めようと思ったんではなくて、
“シンガーソングライターとしてデビューをしたい”、と
思ったところから、ええ…詞と曲を書き始めて。
それで、えー、まあ先々、詞だけの仕事が入ってきたというところで。
あの、いわゆる仕事をこう…作詞の仕事だけを始めようと思って
始めたんではないんです。はい。

───最初は、デュオ(竜とかおる)でデビューされたんですよね。
I:そうです、はい。最初はデュエットで…。
ええ、もうホントのフォークのグループで。
で、そのころ吉田拓郎さんだとか、泉谷しげるさんとかがいた、
”エレックレコード”というところで、19の時だったかな?デビューして。
その時に、自分でも詞や曲を書いて、それがまあ、
この仕事に入るきっかけとなりました。

───そうしたら、音楽活動でデビューされることのきっかけというか…
音楽活動で、プロになられたきっかけ、というようなことだったんでしょうか。

I:もう僕、高校ぐらいの時から、まずえーっと…頭もそんなによくなく。
(笑)スポーツも、全然ダメだったもんだから。
なあんか、これはちょっと人と違う仕事につかないと…
“やばいぞ!?”ってすごく思ってて。
それで、音楽の仕事が出来る、とは全然思わなかったけど。
──その頃から、歌はやっぱり好きだったし。
もう中学校くらいから、ギター弾いたり歌うたったりはしてたので。
じゃあもう一発、勉強とはべつに、音楽のこともちょっと勉強をして。
…そのためには、まあいろんな歌を聴いたり。
好きだったむこうの歌だとかこっちの歌とか
いろいろ聞いたり、コンサートに行ったりして。
なんとかこれが、仕事としてなればいいなー…、とずぅーっと、
中学・高校と思い続けてきたもんですから。ま、ほとんど迷いもなく。
とにかくずっと、音楽の仕事に就こう就こう、と思って、
ええ…十代の半ばから、ずうっと生きてきたという感じ…
でそれで、まあ運よくというか、
仕事に少しずつなっていった、という感じかなあー…。

───迷いもなく、といった感じだったんですね。
なかなか、その年頃では…、なかなか…。しっかりしていらっしゃったんでしょうね。

I:うーん、つーかまあ、その…いやほんと、さっき言ったように、あまり得意分野もなくて…。
ただまあほんとに、通信簿も3とかが並ぶなかで、音楽だけが唯一4だったもんで。
で、あぁこりゃやっぱり僕がやってけるのはもう…
少なくとも、数学や英語よりは、音楽のほうが向いてるのかなあ、と思った。
まあ、割と安易なアレだったんですけど…
でやっぱり、音楽のことに傾ける時間は、やっぱりあの…
他のものに比べると、はるかに長かったとは思いますけどねえ。

───そしたら音楽を聴かれたりとか、ギターを弾かれたりとか。
しながら曲作りをされたりとか…。

I:はい。そうですね。まあ、人に(曲を)作ってもらって、
あの、歌手としてデビューをしよう、っということは、なかったですからね。
僕達の…やっぱフォークの時代っていうのは、
「自分の歌は自分で書く」っていうやっぱりスタンスがあったので。
そういう意味で、「自分で歌を書こう」と思って、暮らしてましたね。



もう、24時間オープンというか… どこででも、詞は書けるかな
───作詞をする際に、どのようなことからインスピレーションやヒントなどを得たり、
またどのような場所で、どういうふうにして、作詞をされますか?

I:うん、あの──もう、詞はほんとに、電車の中でも、飛行機の中でもね。
もう今も来る途中に、あの、ちょっといろいろと…サビの頭の構成なんかはしてくるんですけれども。
僕は、このテーブルに座ってこのペンじゃなきゃいけない、とかそういうことも全然なく。
若い頃はほんとに…ちっちゃいカセットを持ってて。いいフレーズが出たら、
それにぱっともう、言葉で入れてしまったり。
ですから、割と…どこででも詞は、書けるかな。
メロディと違って、キーボードやギターがないと、っていうことも無いので。
詞はほんとに、もう24時間オープンというか…。どこででも書けますからね。

───そちらは、「書きたいな」と思っていて、考えるような感じなんでしょうか?
それとも、フレーズをふと思いつくような感じだったりしますか?

I:…うーん、僕たちみたいな仕事っていうのは、ほら、オーダーがないと。
書いてもまあ、しょうがないっていうか…
書き溜めておくといううえのものでも無いですから。
オーダーがあると、そのタイプさんのことをずうっと考えて、
その人と結びつくような風景だとか、その人がしそうなところなんかに、
まあ割と出向いていったりとか…
それに類図する本を読んだりとかビデオを見たりとかは、しますね。

───あとは、曲が先に出来上がっていて、そちらに(詞を)乗せることがやはり多いんですよね?
I:うん。若い人のあの…J-POP系はやっぱり、圧倒的にメロディ先行ですね。
で、まあ演歌・歌謡曲に…僕はほんと、純粋な演歌とは、あんまりやらないですけども、
歌謡曲系統は、まだまだやっぱり詞先が多いので、はい。
詞からのことが多いですね。

───曲先と詞先だと、やっぱり作り方というのは違ってきますか?
I:いやもう、全然違いますよねえ…、
やっぱり、えー曲先のときは、あの、もうサイズがある程度決まっていますし、
たとえば三拍子、だったら…まあ、ワルツだったらワルツなりの、
“ワルツ”っていうフレーズが使えたりするけれども、メロ取りの場合は、かなりのその制約がある。
で、逆に言うと、メロディから、イメージがくっついてくるので、
雰囲気としてはそのメロディを壊さないようにいい詞をつけていこうと思うと、
割とすんなり上がることがある。

逆に、詞先の場合は、無限大にイメージがあるぶん、まとまりにくくて。
「なんか制約がないかなあ」なんて、逆に思ってしまうこともありますね。
どういうことも自由なぶん、まとまりきらない、ということもあるかなあ…。うん。
どっちがあの苦手とか、得意ということはないですけれども。

───伊藤先生は、作詞だけをされる場合と、やはり曲も作られる場合、両方あると思うんですけれども、
曲と詞を作られるときは、両方とも一緒に作られるんでしょうか。

I:それがねえ…。決まってないんだよねえ──。
でやっぱり、あの、物語のようなものだと、割とこう、
最初から順を追って書いてくんだけども、
CMとか、なんかのタイアップなんつーのが絡むと…、もうホントのサビ、をもう書いて。
えー…それも、だいたいああいうCMとかの単位が、15秒とか30秒とかですから、
まあ30秒ぐらいのサイズでおさまる、すごいこう“インパクトのあるフレーズ”というふうに
考えていくと、やはりもうサビの、もう詞・曲というか、もうそれは本当に押し出す感じで…
どっちが先というところじゃないですね。はい。

で物語風の、起承転結がしっかりしてるものだけはやはり、
えー、まず詞を書いて、それにメロディをつけて。
で、サビで少し、メロディの詞をちょっと調整…
お互いに調整しあったり、ひとことふたこと。
まあ2番3番に行くにしたがって、いいフレーズが出てくるとまた1番に戻って。
今度はちょっとあの、拍(はく)の調整なんかをして。
一拍・二拍に分けたりして、一文字増やしたりはしますけれども。はい。

───(詞と曲が)一緒に出てくる時とかも、ありますか?
I:うん、うん。一緒に出てくることは、ありますね。はい。
ただ断片なので、ほんとにもう、数パーセントしか出てこないので、
それをやはり、いろいろこう肉付けをしたり、なんかしていかなきゃいけなくて。
そこが…最初の「タネ」はよくても、なかなかこう、うまく育てられないこともあるし。
最初のタネはそうでもなかったんだけど、こう、花をつけていくうちに、
もうそのタネの形は関係なく、すごくいいものに育っていく場合も、あるし。
こればっかりはもうほんとに、出来てみないとわからない、っていう感じですねえ。

───ギターを弾きながら作ったりとかもされますか?
I:うん。ギターもピアノも使うんだけれど──両方ともそんなに、あの上手じゃないので。
逆に言うと、手がいっつもおんなじところに、行ってしまうのね。
で、もっと上手で、自分の頭、手がもう自然…、なんつうんだろうかな?
僕の場合は手がもうホントに、行ってしまうので。
逆に、毎回同じようなメロディっていうか、おんなじコード進行になってしまうので…
最近はもう、楽器は使わないで、頭だけで書いて、
あとでコードづけとか、なんかをするようにしてます。

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