松本名誉教授インタビュー

仕事場にいると、目に見えない、透明なスクリーンが下りてくる
───先生のオフの過ごし方を・・1日のスケジュールはどのような感じなんでしょうか?動画を見る

松本教授(以下「M」): 今、ここ最近は予定言いますと、10時には本を持って布団に入ります。
で、本を持って布団に入って、2時間読んで、12時までに何回本をポンポンポン落としてるか・・
寝ちゃって。うとうとしてポンと本を落として。
だからかならずあの本は単行本・・単行本っていうんですね?
ちっちゃい単行本。単行本にしとかないと、大きい音が・・

そうすると、12時には寝てますね。
であとは7時とか7時半には起きます。
僕、朝方なんですよ。仕事は。
夜仕事はしてませんから、午前中に全部仕事を終わらして、
昼間は映画見たり、散歩したり、友達とどっか行ったり、
平日はですね。昼からはずっと自分の時間ですけど。
そうですね・・・平日はそうですよね。はい。

───映画や本などから、
何かいい刺激を受けたりっていうことはありますか?
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M: いっぱい、ありますよね。
当然やっぱりいいフレーズがあったらそれをちゃんとメモして。
やっぱり、自分なりに言い方変えて、考え方はそういうことで、
名詞の組み合わせはこういう発想なんだっていうことで。
自分なりの考え方で、新しい言葉をつくって。映画はそのシーンを。

僕が仕事場にいると、上からスクリーンが下りてくるんです。
白い。目に見えない透明な。で、曲を聞いてましてね、
その曲を聞いてると、その曲のイメージでこのスクリーンに映像がぶわーって流れるんですよ。
僕はそれをこう打ちながら、言葉でデッサンしていくだけなんですね。

「錆びついたガードレールに、もたれ掛けた自転車。
銀行に、そのまま銀行に急いでいく少女達。
何故あの娘はそんなに急いでいるんだろう。
でも3人が、ケラケラ笑ってると・・・」


そんなもの、あの、空想で、曲の中に情報が入っていますから、
その情報を出しながら、こういうスクリーンで映像を見ながら、僕がそれを描いているんです。

ですから、映像は僕にとってものすごく大事ですね。
年間映画は映画館で50本くらい見ますし・・・。

その映像がどうのこうのじゃなくて、
イメージを自分で描くために、映像のイメージの為に、
いろんな発想で映画っていいですよね。はい。

───本もそのような感じでしょうか。
M: 本はね、やっぱりね、映画は全般的に見ますけど、
本は別で、自分の好きな本。
小説の中に美術が関係してたりとか、僕結構古美術って・・
うち、棚の、ほんと、美術館クラスの物もありますし、すごい好きで。

そういうものがテーマとなった小説とかなんかっていうのは、
もう片っ端から読んでますね。
ですから本はいつも2冊。小説と、魯山人の解説書とか・・。
例えばですよ。そういう、いつも二冊、必ず持って。はい。

マイペースですねえ。ほんっとに、マイペースです。
僕はあの、1人って、ほんと楽ですよね。
ほんっとに。今、この、ま、ちょっと今お手伝いさんがずっと病気ですけれども、
来てないんですけども、普段ずっと来てたんですけど、
今、自分、結構料理が上手なんですよ、僕。
みんな僕の料理が食べたくて、みんな家に集まってきますから。
料理が好きですから、自分で料理作って食事しますし、
洗濯も掃除も今は自分でやってますし。嫌いじゃないんですよ。
好きでもないんですけど。
でも環境をきれいにすることがあって、自分が気持ちよくなるんだったら
掃除しますね。
汚いとこって嫌いですから。
綺麗なところでやっぱり居たいっていうのが。はい。

───お仕事をされる場所は、そのお部屋・・
M: 僕は絶対そこ、作詞はそのパソコンとその僕の仕事部屋でしかしないですよね。
そこは開かずの扉って、みんなうちに来る人も絶対そこには入れないとこですね。
誰も入れないとこですね。お手伝いさんがお茶を持ってくるくらいで。
後は一切入れないですね。
別に何か変な物がおいてあるわけじゃないですよ。
そこがほんとに仕事部屋ですから、はい。
ただ前NHKの時は来て、そこで撮影しましたけどね。

───例えば外で良いイメージが浮かんだり、いい言葉・フレーズが浮かんできたときも、
photoM: そんなもの、使わないです。
僕ね、いつもあの、作詞家になりたい人に言う。
メモするじゃないですか、みんな。
僕もメモします。だけど使わないです、そんなもの。つまり、
綺麗な言葉から何かひとつのストーリーって発想できないんですね。
ちゃんとしたテーマがあって、はじめて、ストーリーってできますよね。
その中の一部分としての言葉なんですよ。
非常に綺麗な言葉が浮かんだからってメモして、
さあ仕事するという時にこの言葉から発想しようって思ったら、
多分途中で挫折しますね。僕はそう思います。

ですからそうじゃなくて、歌を作るにはちゃんとしたテーマを。
テーマでもたとえば男の子と女の子と、
たとえば19歳の大学1年と17歳の高校2年の女の子の恋愛っていう
テーマじゃだめなんです。
よく言うのは、“何故、いつも君は僕より先に帰るの?”…という、
そういう具体的な言葉があるテーマですね。
“何故、君は僕といても楽しそうな顔をしないの”、とかたとえば。
そういうことを最初に置いて、そこからストーリーを展開しないと。
あの、よく僕も代官山を歩いて、綺麗な雨が降ってきて、
その雨が綺麗に傘に落ちて、とかっていってその時に、すごく綺麗なフレーズが
あって、(メモに)書くんだけど、やっぱり使わないですね。
一切使わないですよ。

───じゃ、まずテーマありきで。
M: テーマありきです。テーマが大事です。
テーマでもちゃんと具体的なこと。たとえばいいんですよ。
君は僕より食べるの早いね、でもいいんですよ。
僕が電話してもいつも君はいない、…そういうこと。具体的なことが…

例えばね、目覚まし・・・時計が、電話機の横に置いてある。
窓から、ブラインドを通して、斜めの光が入ってくる。
鳴らないステレオが置いてある。目の前には誰も吸っていない空の灰皿。

“どうして君は いつも僕がいる時に この部屋に来ないの?”

って言ったら、本当に詞になっちゃうんですよ。

そのテーマをみんな見つけるのが下手だから、
詞が何を言ってのるかわかんないんです。

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