松本名誉教授インタビュー

かつては、情景描写が苦手だった
───まずテーマがありきで、そこから情景が浮かんでくる感じなんですか?動画を見る
photoM: そうです、はい。で、僕は多分ね、情景作るの上手です。
情景はすごく自分で上手だと思います。
でもかつては、ほんっとに下手でしたね。

───そうなんですか?
M: 下手でした。情景と小道具の使い方が、滅茶苦茶下手でした。
それで僕は街を歩くようになって、情景とインテリアの本を買ってきました。
ですから、風景の写真を買って来たりとか。
それから、ポパイとかオリーブとかああいう小道具。
日常の小道具が入った、サブリナシューズとか、そういうのをいっぱいメモしましたね。
覚えるために。ええ。
もっともミュージカルの台本を書きますので、情景は多分書くことは書くかな。
まあ、得意は得意ですね。

───情景描写が昔は苦手だった…
M: 昔は苦手でした。ほんと苦手でした。
今はほんとに曲を聴いた瞬間に、あっ、この曲・・・先に曲ができてますからね。
この曲は夏の昼間午後二時ぐらいの渋谷の街だな。
それで、みんなちょっとけだるい感じで、みんなオフィスへ・・・
みんなオフィスから出てこない。
疲れきった人たちが歩いてくることも、麦わら帽子をかぶった可愛い女の子と
ちょっとジーンズ履いたみたいな男の子がいるのが
非常にクローズアップして見えるっていう。
情景が、その曲の中に入ってるんですよ。
その曲の中からそういう情景を引き出すのは、作詞家の感性ですよ。

海なのか山なのか街なのか?
朝なのか夜なのか。

その曲を聴いた瞬間に、これはこうでこうでこうでこうで、
すごいガーッてできちゃうんです。
偉ぶるわけじゃないですけど、1回聴いたら全部それが出来ちゃいますから。
それが作詞家の感性ですよね。感性、はい。

───その作詞家の感性を磨く為には?

M: 常に、いっぱい物を見る必要がありますね。
部屋の中にいたら…ですから僕ね、僕が思うに、
パソコンで こうやって・・・(背を丸めて)
“まいったな”、みんな、こう小さくなっていくじゃないですか。
原稿を書くときも。全体が小さくなっていく。
そうするとね、画面と自分の距離がこのくらいしかない。
こんなんでいい詞は書けっこない、いい原稿。
ひろーくして書かないと。(腕を上げながら)

一時期ロッキングチェアを使ってやってたら、
船酔い状態になって気持ち悪くなっちゃったんですけど(笑)
そのぐらいでも、こういうひろーい視野を持ったときに初めて
空気いっぱい自分の前にあると、いい詞とかいい文章が書けますね。


───先生は、恋愛の歌詞もいろいろ書かれていると思いますし、恋愛の本を書かれていますよね。
そちらは、実体験は入っているんでしょうか?


松本教授(以下「M」): 実体験は・・えっと、扉(「心の扉」/小田和正さんとの合作)が
実体験はあるかもわかんないですね。
その文章、そのストーリーが実体験がちょっと入ってます。
あとは全部空想です。

で、僕男ですから、
こういうことをやったら、こういうような女の子に対して男は非常に喜ぶ、
男が喜ぶような女の子像を描くことができるんですよ。
で、逆に、男はこういう風にされたらすごく悲しむっていう、
男を悲しませる女の子像も見えるわけです。
ですから、詞書けます。逆に今度男だったら、
本当男ですから、そういう風に男の気持ちもわかるわけじゃないですか。
そこから、男であるにもかかわらず、女の詞とか男の詞を書けるとか、
そういうことなんです。
僕が女になるわけじゃないですから。
男だから、女の子がこうあったらこうなるんじゃないか、そういう。
ですからその、実体験はそういうことですね。
実体験であったことが、そういう風に反映して、あとは全部もう空想なんですね。

好きな人が喜ぶ顔を見るのが、やっぱり大好き
でも僕、一番最初に書いた本の中に・・・21冊本が出てるんですけど、
一番最初に書いたエッセイの中に、
僕がその頃付き合っていた女の子・・・一番最初じゃないのかな・・・
その頃仲のよかった女の子、
付き合っていた女の子の誕生日に…
すごい大会社だったんです。四大商社の女の子だったんです。
その娘のところに、花を届けたいと思って。

花を届けるためには、花屋さんに行ったらあたりまえになっちゃうから、
なんか考えたんです。
僕、すごい好きなんですそういうこと考えるのが。

よし、で花屋になろうと思って、
オーバーオールを着て、
僕、外車でちょっと大きい車に乗ってたんで
それに乗ってくと、この車、ビルの前につけると目立つからちょっと遠くに置いて、
いつも花を買ってる花屋さんに行って
伝票を1枚もらって、花を買って、その受付に行ったんです。会社の。

「あのー花屋のなんとかですけど、」○○さん…ってお願いしたんです。
何課って言って。

僕は、ドキドキドキドキしながら、彼女が降りてきて、
見た瞬間「はっ」って言って、
固まった姿を見た瞬間に「よしやったぞ」と思って、

「花屋ですけど」

って言ってこうサインしてもらって、
っていうことを自分でやりましたね。(笑)

───素敵ですね。
M: とかね、えっと、たとえば
「じゃあ、明日どうだろう、行こっか、何か美味しいもの食べに行こう」
って僕が全部グリーン車の個室を用意して
キープして、京都の、一見だと入れないお店に予約して、
朝彼女と会って、新幹線に乗って
「えーっ、新幹線に乗るの」
「うん」
って個室でだーっと京都まで行って、で
四条河原のあそこの、はもの美味しいお店に行って、
そこでご飯を食べてぶらぶらして日帰りとかね。
そういうことって考えるの大好きなんです、僕。

やっぱりね、あの好きな人が喜ぶ顔を見るのが、
やっぱり大好きですね。
好きな人の顔。
それは、家族でも同じで、家族の喜ぶ顔を見るのが、
家族ってみんな好きじゃないですか。

で旦那さんは奥さんの喜ぶ顔。
逆もそう。やっぱり自分と関わりある人が喜ぶ顔を見た時に、
本当に嬉しそうな顔を見た時に、満足ですね。
で作詞ってそういうものなんですよ。
詞を贈った時に、一般の人が、聞いた人が、
本当にそれでもって勇気を感じてくれたり、
嬉しそうな顔をしてくれたことが嬉しいですね。
それを想像して書きますよ、
やっぱりね。はいはい。

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