松本名誉教授インタビュー

自灯明、法灯明…とにかく一歩、踏み出すこと
───先生の座右の銘とか、好きな言葉ってありますか?

photoM: 今年はですね・・。毎年僕自分の習字…。
自灯明、法灯明」っていう。

自分の自に「灯」、灯明ですね、自灯明、で行を変えて
法灯明。法律の法に灯明、おんなじですね。
これ禅の言葉なんですよね。

何か?って言ったら、
自分で迷って迷って、ほんとに迷って、何もできなくなった時に
足を止めちゃだめですよ
、っていうことなんです。
その時は自分自身を明かりにして前へ一歩進みなさい、
「自灯明」でどうしても自分さえ・・・自分を信じなさい。
で、自分を信じられなくなった時は仏とか神の教えを
一つの指針としてとにかく一歩踏み出しなさい、っていう
禅の言葉なんですよ。

今年はそういうテーマでやってますね。

「自灯明、法灯明」以外で、好きな言葉は、
募集」っていう言葉と「ときめき」ですね。

募集っていうのは人事とかなんかで人を集める
その募集っていう言葉を見た瞬間に、新しい
ある人とある人が全く新しい境遇で、新しい
時間と新しい場所が始まるっていうイメージできますね。
「募集」っていう言葉の中には。

「ときめき」っていう言葉は、当然ときめきで。
常にその、恋愛じゃなくても自分自身が世の中生きてくこと、
毎日毎日ときめいていたい、そういうことですね。

「募集」、「ときめき」は、もうずーっと20代から好きな言葉なんです。

自分というものをいつも確立して、マイペースに
───ミュージシャンの方たちとか、作詞家の方や作曲家の方と、
普段から親交のようなものっていうのはあるんでしょうか。


M: あんまりないですね。
あの、そういうことが好きな人はいますよ。
レコーディングがものすごく好きな人がいるんですね。それからスターが好きな人がいます。
スターととにかく一緒に何かご飯を食べたりする作詞家も作曲家もいる。
僕ね、あんまりね、好きじゃないんですよ。でないと僕は全然違う業界の人たちと。
それこそファッション業界とか役者さん・・役者さんはそうか・・・役者さんもいますね。
インテリア関係の人とか、そういう人たちと合ってますね。芸人さんたちとか。

ですから、それは人それぞれの多分タイプだと思いますね。
常にその、コンサートが終わったら、
必ずなんかその打ち上げに顔を出す人とかっているじゃないですか、僕はあんまり・・・。

この前もコンサート行ってきて、最初に電話して、
すっと見てさっと見て帰りますから。
行ったら、もうちょっと始まる前に楽屋行って挨拶して…
打ち上げももちろん行かなかったんですけど。
本当に好きじゃないんですよね。ただ芸能人もいます。
お笑い系のある有名な方とはよくカラオケ行きますし、そういうのはいますけど、
まあ、芸能人・・・どっぷりつかるのはあまり好きじゃないですね。
音楽業界ですから、というわけじゃないですからね(笑

───人それぞれというかそんな感じで。
M: それが好きな人は行けばいいですし。
あの、そうですね、やっぱり、自分というものをちゃんといつも確立して、
好きなものを・・・

ある社長さんと一緒に行ったんですけど、
そういう人は僕のこときちんとしてくれるし、そういう人って居心地いいじゃないですか。
お互いがお互いの、僕も相手のプロダクションの社長さんのことを
きちんと尊敬してますし、そういうことで、冗談言っててもお酒飲んでても、
お互い尊重しあえるっていうか、 そういう人たちといる方が自分をちゃんと持っていることができますね。
無理して自分を変えて崩してまで、その相手と上手く行きたいとは思わないですね。

マイペースです。ほんとマイペースです。

───先生が目指されている事やビジョンとか、これから今したいな、っていう風に
思ってらっしゃること、予定されてることなどはありますか?

M: そうですね、去年はミュージカルを1本やったんですね
自分が原作脚本演出をやって、多分200人の出演のやったんですけど、
それからミュージカルの仕事がいっぱい来た後に、断ったんです、僕。

やっぱり僕はミュージカルできないなと思ってたんですけど、
今ちょっとまた1つ、ある企画があって、ミュージカルやりましょうという話が、
・・・やりたいなとは思ってます。

ただ、何でミュージカルは僕、合わないかなっていうと
僕はその、敬語なんです。いつも。誰に対しても。
そうすると、演出家が敬語を使ってる、迫力ないって言われたんですね。
「その話おかしいですね」、って言うよりも、「だめだよ、そんなもんじゃ」
って言わなきゃだめなのを僕は、
「そのやり方じゃないですね」って言っちゃうんですね。
だから演出家としては無理みたいなんですけど。
で、3つくらい仕事を断ったんですけど、今回はちょっと
受けようかなって。誘われたんで。

───作詞以外のお仕事もいろいろ・・・
松本教授(以下「M」): 多いですね。今もそうですよ。
埼玉県なんですね。松伏町ってありますよね。
僕はそこの町長さんからの依頼で、(松伏町の)芸術アドバイザーをやったりとか、2年間、3年間。
さいたまスーパーアリーナの名勝選定委員会も、
7人のうちの一人なんですけども。

他もそうですし。
他の会社でもアドバイザー契約、顧問契約みたいなのをしていますけど。
結構好奇心旺盛です。

───作詞だけというよりは、いろいろ・・・。もちろん作詞に結びつくということもあると思うんですけど。
M: みんな、結びつきますよ。

もし結びつかなくても本に結びつきますし。
それから、例えば作詞の打ち合わせをしている時に
相手のプロデューサーと話をするその時の話題として。

だからといって、そういうことをやっているわけじゃなくて、
作詞家って、すごくいい仕事なんですけど、
それだけになったら、それだけになっちゃうんですね。
もっと自分の見聞を広めた方が楽しいですね。

人が好きだから、人の為に詞を書く
───人と会われたりするのもお好きなんですか?
M: 嫌いじゃないですね、人と会うことは。
あの、そうですね。初めて会う人は、
今日なんかも楽しみでしたし。

───ありがとうございます・・・。お話をお聞きして感じたんですけど、
人がお好きなのかな、っていう感じがなんとなく。

M: 基本は人が好きなんですね。

人が好きだから詞が、詞の中に人がいるっていうことも
もちろんあると思うんですけど、
主役が人ですから、人が好きだっていうことがあるから、
人の為に詞を書きますし。

───人の為に。人が登場する詞を・・・。
M: 作詞っていうのは3分間のドラマって言いますけど、
僕は違うんじゃないかって。
人は3分間のドラマ…3分のドラマじゃない、
そういう意味じゃおかしいですよね。
断片ですよ。生活の。

僕の好きな言葉、っていうか、僕がいつも言ってるんですけどね、
Slice of life ってあるんですね。
レモンをスパッと切ったら、果汁がバッと出るじゃないですか。
人の生活もスパッと切った時にこういううわっと、新鮮なこう・・・
これを、詞にしたいと思ったんですね。

ですから、断片でいいと思いますよ。
ドラマを作ろうとは一切思わないですし。
3分のドラマだなっていうのは、非常にこうおごった言い方じゃないかっていう気がしますね。
断片的なもの、だと思います。


───それでは、作詞家を目指すみなさんに、アドバイスなどありましたら教えてください。

M: あの、何かね、1つ自分の一番好きな、
得意な分野っていうのを持つべきですね。

僕はその、さっきも話したように、美術っていう。
美術って大好きですから、今年1月2日の
美術の展覧会に行った時に1人で見に行ってますし、
一人でもその美術館に行ったりとかしますし
そういうことで、できるだけ・・・美術好きですから、見てますよね。
で自分も、買える物は買ってますね。多少無理しても
買った方がいいと思うものは買ってますし。

そういうことで、なんとなく、
「作詞家になるんだから、作詞家のために
すべてをこう持って行きたい」と言うよりも、
作詞家になりたかったら、
たとえば映画を人よりたくさん見るとか
美術が好きだとか、それから日本中の風景を散歩するとか、
医学の勉強でもいいと思うんですけど。
自分にしかできないような、そういうものがあるといいですよね。

そうすると、そういうことに関しては、
「あの人一番詳しいから」というものが出来るんじゃないかっていうことが、
そういうことがあるような気がするんですよね。僕はね。

───今日は、本当にどうもありがとうございました。

(2008年3月5日 都内某所にて)

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